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100億ドル紙幣でパンを買う国 −ジンバブエの現状−

 ジンバブエ共和国はアフリカ大陸の南部に位置する人口1000万人ほどの国です。1980年にイギリスから独立し、以降ムガベ大統領(87年までは首相、87年大統領就任)が現在に至るまでずっと政権を握っています。

ジンバブエ国旗

 ジンバブエは今年(2008年)、本当によく世界中のメディアに取り上げられました。話題満載の国だったわけですね(苦笑)。しかし笑っていられないことに、それらの話題は全て悲惨なジンバブエの現状を伝えるものばかりでした。

<話題1:ジンバブエ通貨のハイパー・インフレ>

 タイトルにもあるように現在のジンバブエの紙幣(ジンバブエ・ドル)では、5億ドルでやっとパンが1つ買える程度だそうです。なぜパン一個買うのに5億ドルもかかるのかというと、ジンバブエでは近年、インフレーションが加速度的に進んでいるからです。
 現在の換金レートはアメリカ・ドル「1ドル」に対してジンバブエ・ドル「6億ドル」です。つまり6億ドルが日本円で90円にも満たないわけですね。

続きはこちら→


 ある調査機関の発表によると、2008年12月18日現在のジンバブエの年間インフレ率は「500,000,000,000,000,000,000%!」だそうです。言い換えると「5垓(がい)%」です。
 つまり年初に1円で買えた商品が、年末には5垓円 【 訂正:→500京円ですね、多分…】 になっているということです。ちなみに1垓円とは1兆円の1億倍を意味します。ありえないほどの超インフレ状態ですね。

 こうなってくるともはや息をしている間にもインフレが進み、持っている紙幣の価値がどんどん下がっているような状況です。実際、店頭では値札が一日に何度も付け替えられるのはもちろんのこと、それどころか店を閉めてしまうところも目立つといいます。これではジンバブエ国民はとても生活していけません。現在ジンバブエ国民の多くは1日にパン1個買うことすらできない状況といいます。

 この超インフレに対応するため、ジンバブエ政府は100億ドル紙幣を発行することに決めたそうです。しかしながら、実はジンバブエでは今年(2008年)の8月にデノミネーション(通貨の切り下げ)により10桁切捨て(100億ドルが1ドル)が行われたばかりです。それがたった4ヶ月足らずで、またパン1個が5億ドルになってしまうのですからきりがありませんね。こんな混乱の中、ムガベ政権の高官らは一般よりはるかに高い為替交換レートで現金を得ていると報じる記事もあります。


<話題2:ジンバブエのコレラ感染の蔓延>

 ジンバブエは平均寿命が36歳と、世界で最も寿命が短い国でもあります。

 その理由は様々ありますが、一つはHIV、エイズ感染者が国民の3割に上ることが上げられます。加えてこの経済状況ですから当然治療薬を買う余裕などあるはずもありません。
 また、今年ジンバブエではコレラ感染が大流行してしまい、WHO世界保健機構によると感染者数は20,896人に登り、これまでに1,123人が死亡したといいます。しかしムガベ大統領は先進国から干渉されるのを嫌い、国内のコレラ流行を完全否定しています。


<話題3:ジンバブエ難民の国外流出>

 そういった様々な要因からジンバブエで生活を続けていくのはもう無理だと考え、隣国である南アフリカ共和国へ渡る国民が続出しているそうです。CNNの記事によると国民の25%程度が国外に脱出したといいます。

南アフリカへ向かうジンバブエの子供

 写真は南アフリカ共和国へ脱出した子供ですが、腕に"卍(まんじ、ハーケンクロイツ)"のマークを削っています。この子供はヒトラーを崇拝しているのではありません。それどころかヒトラーが何をしたのかさえ知りません。このマークを腕に削ったのはこのマークが「ドイツは絶対に降伏しない(あきらめない)」という意味だと教えられたからだといいます。

 この子のように希望を求めて南アフリカへ渡っている子供はたくさんいるわけですが、南アフリカへ渡ったからといってそこに夢のような世界が待っているわけではありません。男の子たちは路上で物乞いをするか、農場でこき使われるか、そして女の子たちにいたっては召使として雇ってもらうか、売春することで何とか生活をしているというのが現状なのです。


 先日ムガベ大統領は定例会見で「私は何があっても絶対に政権を譲らない。ジンバブエは私の国だ。」と述べたそうです。今や"独裁者"と揶揄されるムガベ大統領ですが、就任した頃は民族の融和政策を取り、「自由な国」を目標に掲げて国民からの信頼も厚かったといいます。正気を取り戻してくれたら、と心からそう思います。

 皆さんはどんな風に感じられますでしょうか?

↓At-Globe内の関連記事
イラク開戦から4年、トラウマに苦しむ子供たち
「報道か人の命か?」ケビン・カーター氏のドキュメンタリー映画
世界に見る所得格差の実情
世界中の人にきれいな水が飲める環境を!−国連の調査より

↓今日の記事の参照サイト
CNN(New Zimbabwe $10B note buys bread)
RIA NOVOSTI(Hyperinflation-hit Zimbabwe issues 10 bln-dollar banknote)
CNN(Carter: Cholera-, inflation-ridden Zimbabwe 'a basket case')
CNN(Thousands of Zimbabwean youth flee to South Africa)
BBC(Mugabe insists 'Zimbabwe is mine' )
Wikipedia(ジンバブエ)
WHO世界保健機構のWebsite

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atglobeの投稿(14:47:59-2008-12-20) - カテゴリ: Think Global TrackBacks

コメント

atglobe wrote:

この記事を書いた後、ジンバブエでは一日でどれくらい物価が上昇するのか
気になったので計算してみました。
その結果、一日あたり約12%程度の上昇率と思われます。
高利貸しで10日ごとに1割の利息をのせる「十一(といち)」という言葉が
ありますが、十一ならぬ一一(いちいち?)なわけですね(笑)。
2008-12-22 18:45:06

Jun@LA wrote:

ここまでくると、『貨幣』というものの根本的な見直しが必要な気もしてきますね。
そうではなくても、ここ数ヶ月の原油価格の高騰と暴落、株価の高騰と暴落は、市場原理(需要と供給の関係)から既に離れて一人歩きしている証拠のような気もしています。

資本主義と自由主義、民主主義がセットになっているような錯覚を持っている人が多いと思いますが、自由主義、民主主義は残したままで資本主義の見直しの時期じゃないのかなと感じています。
今こそマルクスの言った、「資本主義の成熟の果てに社会主義が可能になる」時期(既に時期をとっくに過ぎている・・・)なのかとも感じています。

金融破たんは、ハイ・リスク・住宅ローンが一斉に弾けた(回収不能になった)事を発端としていると思うので、これは回収不能に陥る事が充分に予見出来た貸付を積極的に行った金融機関(と担当者)の近視眼的錬金術の失敗と思われるのですが、金融経済のプロがなぜ一斉にそんな事(消費者金融やヤミ金のような貸付け方法)を行ったのかが僕にはちょっと不可解です。
不動産業者が物件を売りたくて無理やりローンを通しただけなら判るのですが、審査すべき金融側が素人でも回収不能を予想出来る相手に甘い審査でガンガン貸し付けるなんて全く自殺行為だと思うんですが・・・・全国の金融のプロがこぞってそれをやったのは金融機関がみんな熱病に浮かされていたのでしょうかねぇ?
2008-12-24 04:55:57

atglobe wrote:

To Jun@LAさん

>自由主義、民主主義は残したままで資本主義の見直しの時期じゃないの
>かなと感じています

同感です。
市場も金融(先物、保険などなど)もそうですが、何でも金に変えてしまう
この経済のしくみは行き過ぎなのかもしれないと感じています。
やがては国家の売買まで行き着く、なんて事を考えると恐ろしいですよね。

>金融破たんは、ハイ・リスク・住宅ローンが一斉に弾けた(回収不能に
>なった)事を発端…
>全国の金融のプロがこぞってそれをやったのは金融機関がみんな熱病に
>浮かされていたのでしょうかねぇ?

バブルでしたね(笑、笑ってられませんが…)。
私は随分前にある百貨店に勤務していた時期があるのですが、後にその
百貨店はバブル崩壊と共に破綻しました(そう、そ○うデパートです)。
その百貨店はバブル期に驚異的なスピードで店舗数を増やし、規模を拡大
していったわけですが、それができたのは「上がり続けた地価」のおかげ
でした。
開発の進んでいない駅裏の二等地を買い入れてそこに新規店舗を作る
ことで、その地区の商業地化が一気に進み地価もうなぎのぼり。
出店から数年で借金を返済できた店もあったほどです。
当時は"水○(社長の名前)マジック"などと、メディアにもてはやされた
ものです。
バブル崩壊と共に土地の値段は下がり続け、その百貨店の"魔法"は解けて
しまったわけですね。

今回のアメリカのサブプライム問題も、やはり地価の上昇を当て込んだ上
での融資だったのでしょうから、日本のバブル崩壊の二の舞と言えるのかも
しれませんね。
2008-12-26 11:09:56

Jun@LA wrote:

At Globeさま
今年のLAは雨のクリスマスでした。しかも経済悪化でいつになく静かな、クリスマスだという事を忘れてしまうようなクリスマスでした。

時々顔を出す、アメリカの警備関係のフォーラムがあるのですが、そこで時々話題になるのは、「自分は警備の仕事が好きで続けたいのだけれど、家計の助けにとマクドナルドでパートで働いている妻の方が収入が多くなって来た・・・・」というような内容なんです。
勿論、そのフォーラムではトップVIPの身辺警護をするような警備員や警備会社へのコンサルタント、警備会社の経営者などもメンバーなんですが、『警備員が起した事件』などの話題になると、必ず「警備員の質を上げるには最低賃金で働いている労働環境をまず改善しなくちゃ・・・」という結論になります。
収入から行けば前出のマクドナルドやK-Martのパートの店員さんをやってる方が収入は良くて労働条件は良いのに、あえてその仕事が好きでやってる若い人が結構居るんですね。
同様に、ローカルの歌手・画家の人たちにも言えることだと思うんですけど、命を懸けて働いている軍人にも言えるかもしれませんね(戦争や軍人という職業の是非は別として)。
それに対して、MBAやNFLのプレーヤーたちは10億円の契約では満足できないのでストライキとか、一般の製造業労働者の3倍以上の賃金を貰っているUAW(全米自動車労働組合)が会社が潰れるという時期に賃金を下げる事を拒否したり・・・・・。

本来の民主主義だと、『能力に応じた労働を行い(選択し)能力に応じて報酬を得る』という形だと思うんです。
でも、MBAやNFLのプレーヤーたちは、防弾チョッキを着て銃を持って暗い工場を見回っている警備員の100倍の『能力』があるので100倍の報酬を得てるとは思えません。
(確かに能力はあると思いますが、彼らの報酬は能力に応じてではなくて収益分配率の結果だと思うんです。例えば警備員資格と警察官資格では要求される履修カリキュラムが20倍以上違いますが、収入は20倍も違いません)
同様にトップの俳優さんやラップ歌手が何億もの収入を得ているのは、決して能力に比例した報酬ではないと思うんです。

子供に将来なりたい職業を聞いて「土地ころがしの地上げ屋」とか「高利貸し」と答える子は居ないと思うんです。
それがいつの頃からか、高収入を得られる職業を目指すようになってしまうんですよね・・・・。
もし、どんな職業に就いても同じ収入を得られるとすれば誰もが自分の好きな分野や社会貢献度が高い職、それによって他人が喜んでくれる職を目指すと思うんです。
『能力に応じた労働をし(職を選び)必要に応じた収入を得る』社会主義世界はもう実現する事はないのでしょうか・・・・・。
2008-12-26 13:46:20

atglobe wrote:

To Jun@LAさん

>今年のLAは雨のクリスマスでした。しかも経済悪化でいつになく静かな、
>クリスマスだという事を忘れてしまうようなクリスマスでした…

そうですか…。
これだけ景気が悪化すると、いくらクリスマスとは言えどもはしゃいでは
いられないムードが漂っているような感じなのでしょうかねえ。

ところで「ロス郊外で銃乱射事件」という記事をチラッと見ました。
クリスマスのパーティーをしていた家庭に、サンタクロースの格好をした
容疑者が乱入し銃を乱射したとか…。
まったくひどい事件ですよね。

アフリカのニュースサイトにこんな記事がありました。
「ジンバブエはキリスト教徒が多数を占める国だが、今年はクリスマス
どころじゃない。店には何も売っていないし、そもそも買う金がない。」
何か明るい話題はありませんかねー。

↓Zimbabwe: 'Christmas is Cancelled'(AllAfricaの記事)
http://allafrica.com/storie...

>MBAやNFLのプレーヤーたちは10億円の契約では満足できないのでストライキ
>とか、一般の製造業労働者の3倍以上の賃金を貰っているUAW(全米自動車
>労働組合)が会社が潰れるという時期に賃金を下げる事を拒否したり…

貧富の差(ジニ係数)が広がっているという話題は資本主義の国全般に言える
ことなんでしょうけど、アメリカは別格かな、という印象を持っています。

Jun@LAさんがご指摘のようにスポーツのトッププロもそうですし、企業トップ
の報酬もそうですが、日本とは桁違いです。
この度一時的に救済されたカー・メーカーのビッグ・スリーにしても、例えば
GMのワゴナー会長はストック・オプションやインセンティブなどを含めると
十数億円の年間報酬を受け取っていたわけですよね。
Jun@LAさんご指摘のように従業員の給与も非常に高水準ですから、「その
企業を救済する」となると、首を傾げたくなる米国民が多いのも当然なの
でしょうね。

確かに、行き過ぎた資本主義、市場原理主義を見直す必要がありそうです。
2008-12-26 20:14:41

atglobe wrote:

<ジンバブエ通貨に関する続報>

昨年末にお伝えした以降、さらにインフレが加速しているジンバブエ。
まだ2009年に入って1ヶ月しか経っていませんが、その間に起こった
出来事についてまとめてみました。

昨年末(この記事をアップした)時点
 2008年8月 デノミネーションにより10桁切捨て(100億ドルを1ドルへ)
 2008年12月 交換レート 米ドル「1ドル」ージンバブエ・ドル「6億ドル」
 2008年12月 パン1個の値段 = 5億ドル
 2008年12月 100億ドル紙幣を発行

2009年以降
 2009年1月 交換レート 米ドル「1ドル」ージンバブエ・ドル「3300億ドル」
 2009年1月 パン1個の値段 = 3000億ドル
 2009年1月 100兆ドル紙幣を発行

 2009年2月 交換レート 米ドル「1ドル」ージンバブエ・ドル「300兆ドル」
 2009年2月 パン1個の値段 = 100兆ドル紙幣でも買えなくなる
 2009年2月 デノミネーションにより12桁切捨て(1兆ドルを1ドルへ)

いったいいつまでこんな事を続けるつもりなのでしょうね。
1月中旬には、ムガベ大統領がずっと渋っていたツァンギライ議長の首相就任
が実現しましたが、どうやら一気に好転とは行かないようですね。

↓ニュースソース(CNN)
http://edition.cnn.com/2009...
http://edition.cnn.com/2009...
2009-02-03 09:53:29

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